株式会社BINGO

2025/05/09 FRI - 2025/05/10 SAT

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COLLECTIBLE AUCTION

1962 Ford Galaxie 500XL Convertible

良い距離感。

1959年から1974年の15年間で、4度のフルモデルチェンジをした、フォード ギャラクシー。フォードのトップモデルの一つとして、フルサイズモデルの迫力あるボディーラインと、直列6気筒エンジンから、ミディアムブロックのV8まで選べる多彩なバリエーションは当時から高い人気を誇った。
今回登場するのは、1962年製の2代目ギャラクシー。米国の某有名カスタムショップがカスタムし注目を集めたモデルでもある。

愛車との関係を表す常套句として“蜜月の関係”というコトバがあるが、このフォード ギャラクシーとオーナーの関係は少し雰囲気が違う。
初めて、このクルマと対面したのは、2024年12月。ドロドロとアメ車ならではなV8サウンドを轟かせながらショールーム裏にオーナーが運転をしてやってきた。
ヤレているなんていうコトバではモノ足りないほど、時間の経過を感じさせる佇まいなのに、聞こえるエンジン音は驚くほど滑らかで、安定していた。
某有名銀行の副頭取まで勤めたオーナーが、36年に渡り所有するこの個体とどんな関係を築き、長年所有することになったのか、その経緯にとても興味をそそられた。

オーナーは、銀行マンとして長きに渡りアメリカでの激務をこなしていた1991年のアトランタ。当時の部下から1万ドルでクルマを買ってほしいと打診を受けるところから始まる。
社用車に乗り、クルマには困っていなかった。家族のためのクルマはなかったそうだが、わざわざ30年前のモデルを選択する必要はない。それでも部下の言い値の1万ドルで購入を決める。
太いトルクで前に前にと進む感覚と、ゆったりとした乗り心地。昔ながらのアメ車の乗り味を好むオーナーの目には、ギャラクシーが手頃に楽しめそうな1台に見えたのかもしれない。
しかし、いざ自分のものになると、色々な不調に気づく。当時ニューヨークに住む家族がアトランタに遊びに来た際にこのギャラクシーに乗って観光を楽しんでいた時、坂でエンジンが止まってしまう。このままではいけないと、エンジンをオーバーホールすることに決めショップに持ち込んだ。どうやってそのショップに決めたのか…。オーバーホールが終わり、クルマと一緒に来た請求書には、車体価格のほぼ倍、1.7万ドルという数字が。家族からの冷ややかな視線が強まる一方で、ギャラクシーは好調を取り戻した。その矢先、1993年異動が決まり日本に戻ることになる。
せっかく復調したギャラクシーをアメリカに置きっぱなしにもできず日本に連れてくるも、2005年までの12年間でオーナーが日本にいたのは5年。アメリカと、日本を行ったり来たりの生活が続くことになる。その間も手放さず、日本に帰国した際にはエンジンに火を入れていたため、コンディション自体は悪くなかったそうだ。しかし、いざ乗ろうと思うとすると、12年という月日は長かったようで、幌や、エンジンにミッション、内装など、気になる部分を主治医と相談しながら手をいれていくことになる。
エアコンや、純正オーディオに仕込まれたBluetoothシステムなど快適装備も追加されたギャラクシー。オーナーがゴルフ場に出向く際に使用され、ご自宅から、横浜の某ゴルフ場まで、東名高速を颯爽と走り抜けていたそうだ。
なにが起きても不思議ではない旧車。しかし、乗らずにいるのも過去の経験から良くないこともわかっている。そこで定期的に乗る理由になり、ストップ&ゴーも少ない高速道路を中心に乗ることができ、さらに主治医が、自宅とゴルフ場の間にあるため、どんなことがあっても安心という、合理的なコースが定番になっていたそうだ。

横浜の某ゴルフ場の駐車場では、少し浮いた存在だったようだが、そんなことはお構いなし。「その辺の高級車より、品があるように?見えるでしょ」というオーナーの言葉には歴史を引き継ぎ、刻んできた自負があるからだろう。
けれど、奥様からは歓迎される存在ではなかったようで、1度目は、アトランタで故障した時、2度目は、手放すと決めた時にオーナーが「乗らないか」と声をかけ、「最後に乗ってみましょうか」と近所をぐるっとした、たったの2回だけしか乗られたことがないというからびっくりだ。

1962年製のフォード ギャラクシーに、オーナーは結局幾らつぎ込んだのか。主治医からの請求書も残っているから、計算することは簡単だ。でも、そんなことをするのは野暮。
それよりも、オーナーとクルマの付かず離れずの距離感。クルマのコンディションを絶えず気にする姿勢。何かあればすぐに主治医に相談し、不安を解消していることがわかる請求書。品川2桁ナンバーを維持し、2年で約3,000マイル(4,800km)をコンスタントに走っていることのわかる車検証。
ただただ綺麗に仕上げて、最新のエンジンを搭載して…と、そんな楽しみ方もあると思う。しかし、できるだけオリジナル。それでも自分が楽しめるように、困らないようにメンテナンスはする。

撮影のために少し運転したが、どこか曖昧なアクセルと、ハンドルは、一朝一夕には癖を見抜くことは難しい。どんな操作もゆったりと、クルマの意思を尊重しないと上手くは走ってくれない。
大切なことは、相手を尊重できる大きな心で対峙できるか。そのクルマが歩んできた歴史を尊重し、配慮を怠らず、決して無理はさせないが、本来のあるべき姿を忘れさせない。どこか人付き合いにも似たオーナーとのクルマの関係性に、改めてクルマとの付き合い方を考えさせられた。

ESTIMATE:

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VIN 東[41]31380東 (2U69X162092)