1973 Mazda Savanna GT [RX-3 / S124A]
オリジナルコンディションを保つことは簡単ではない。経年劣化によるダメージはもちろん、純正パーツが手に入らないなどなど。
それでもオリジナルに限りなく近い状態にレストアを施されたのが、この1972年製マツダ サバンナ RX-3 GT。
オリジナルコンディションを保ちつつ、レストアを成功させるには3つの“コト”が必要になると思う。
1つ目は、知識があるコト。
2つ目は、オリジナル度の高いベース車両を確保するコト。
3つ目は、こだわりを理解し、協力してくれる人がいるコト。
今回のサバンナ RX-3 GTは、その3つをクリアし、レストアが施された1台となる。
このクルマのオーナーは、九州でも指折りの整備士。クラシックラリーのサポートメカニックを務めるなど、その高い技術力に多くのファンがいる。特にポルシェの造詣が深い。でも、ポルシェだけという訳ではなく、ガレージには新旧輸入・国産車問わず幅広くピットインするそうだ。要するに、様々なクルマへの造詣も深く、知識も技術もあるということ。
そんなオーナーが見つけたのは、当時ハコスカの連勝記録を止めたレーシングカーの市販バージョンとして登場した、1972年製の“サバンナ GT”。
レースでの勝利や、安価なこともあり、人気になったサバンナは、オーバーフェンダーやチンスポイラーなどレーシングカールックに仕立てられた個体が多い。さらに安価だったことも相まって大切にされなかった個体も多く、ボディーに手が入っていない個体は珍しいそう。さらに排気ガス規制を受ける前の、1972年製の12Aエンジンを搭載した1台。
オーナーの元に届いた時点では、オリジナル度は高いものの決して良いコンディションとは呼べなかったそう。そこで、餅は餅屋ということで、板金業者でボディーを塗装。
本来ならエンジンルームやボンネット裏、トランクルームなど全てを取り外し全塗装するのが定番のコース。しかし、出荷時のカラー番号が書かれたシールや、エンジンルーム内のプレートなど、取り外したくないものが多く残っていた為、外装のみ塗装が行われ、それ以外の部分はオリジナルコンディションのまま仕上げが行われた。
エンジンはロータリーエンジンのレストアで有名な関東の業者に。そこでローターと、シール交換が行われ、完全復調したエンジンに、もともと装着されていたダウンドラフトのキャブレターから、純正キャブレターを装着したものの、純正のエアクリナーが見つからず困っていると、業者にあったエアクリナーを譲ってもらうことができ、エンジンルームも出荷当時のような見た目に仕上げることができた。
唯一、フロントのシート2脚がもともと張り替えられていたことがオーナーとしては納得のいっていない部分にはなるが、オプションで装着された8トラのオーディオが残っていたり、リアのボードに置かれた“ポピー”は、当時のまま現代にやってきたかのような錯覚をさせてくれる。
完璧なオリジナル。という訳ではない。
それはレストアを施しているからだ。しかし、その仕上がりは、当時のまま、空気感も意識したオリジナルに限りなく近いレストアが施された1台となる。