1969 Iso Grifo 7Litri
- 希少な7リッターエンジン搭載モデル
- 世界的なコンクールで数多くの受賞歴を持つ個体
- コンクールコンディション
車両解説
●希少な「イソ・グリフォ」の7リッターモデル
「イソ・グリフォ」はまさに完璧な布陣でもって作り上げられた、イタリアンスポーツの至宝である。
官能的なボディデザインは巨匠ジョルジェット・ジウジアーロによるもの。設計者には、「フェラーリ 250GTO」を世に送り出した天才、ジオット・ビザリーニが担当した。心臓部には高い信頼性と性能を求めてアメリカ製V8エンジンを搭載。走行性能、安定性、耐久性と全てにおいて非常に高い完成度を誇ったイソ社渾身のグランツーリズモこそが、この「イソ・グリフォ」だった。
伝説的な名車が名を連ねるイタリアの自動車史においても唯一無二の輝きを放つ「グリフォ」であるが、その中でもこの個体は、より高いパフォーマンスを求めて L36 427 7リッターエンジンを搭載し、5速ミッションを装備した特別モデルとなる。
最高出力は435馬力、最高速度は300kmを誇り、1969年時点において最も速いツーリングカーとして認知されていたことでも有名だ。
しかしその名声にも関わらず、「グリフォ」は全てのモデルを合わせても製造台数はわずか400台程度であり、この1969年式はわずか43台のみとされている。さらに当個体と同程度にオプション設定がなされた車両は10台ほどだったと言われ、その希少価値は計り知れない。
さらに内装も特別仕様となっており、美しいクリームカラーのレザーシート、ブルーのカーペットが、洗練されたこの車によりラグジュアリーな印象を与えている。
またボディにはブルー(Blu Mellizzato)が、珠のような光を放つジウジアーロの流麗なボディラインを強調しつつ、7リッターモデルの特徴である大きく張り出したフロントフードのバルジによって、アメリカンマッスルの血統を感じさせる精悍さが織り込まれている。
●世界的なカーコンクールで数多く受賞歴を持つ個体
上述の通り非常に希少なモデルとなる当個体であるが、白眉はこのシャシNo.「7L950297」が世界的なクラシックカーコンクールで数多くの受賞歴を持つ一台であるということだ。
当個体は「David Grant Restorations」によってレストレーションされた後、1999年の「ペブルビーチ・コンクール」に出場。その美しさで会場を魅了し、見事クラス優勝を獲得した。2003年度には雑誌「Octan」に掲載。その後は各オーナーによって入念なメンテナンスのもとコンクルールコンディションを維持しながら大切に保管された。
そして2012年から再びカーショーでその姿を表し、同年の「The Quail A Motorsport Gather」、2013年度の「Boca Raton」と「Park concours」でも優勝を攫う。2015年にはニューヨークを拠点とする高名なコレクターにより売却され、2016年度の「Boca Raton Concour」にて、「ベスト・オン・クラス」と「スポンサー・チョイス賞」の二冠に輝き、注目を集めた。
●伝説は永遠に
「グリフォ」は1963年のトリノモーターショーで発表された。車両の基本構造は、先代の「リヴォルタ」から引き継いでいたものの、設計者として続投したビザリーニはさらなる戦闘力の向上を目指し、重量バランスの見直しを行う。エンジンを40cm運転席側にオフセットすることで、フロンドミッドシップレイアウト化。これにより前後重量配分を最適化し、低重心にすることで、高速走行時の安定性を高めた。
また、「グリフォ」はロードモデルであるA3/L(ルッソ、ラグジュアリーの意)と、レーシングモデルであるA3/C(コルサの意)の2台が同時に発表されたということでも、来場者から注目の的となった。
その完成度の高さはレースで示すこととなり、1964年のル・マン24時間レースでは総合14位(5Lプロトタイプクラス優勝)、翌年には総合9位、同クラス優勝という輝かしい成績を収める。しかし、その後はオイルショックの憂き目に遭い、イソ社は1974年に惜しくも倒産。伝説だけを残し、イソの歴史はついれたかに見えた。
しかし、名門カロッツェリアであるザガートによって、実に43年ぶりに奇跡の復活を遂げる。2017年にはコンセプトカーとして「イソリヴォルタ ザガート ビジョン グランツーリスモ」が人気ビデオゲーム『グランツーリスモSports』に登場。
そして2019年、世界限定19台として、「イソリヴォルタ GTZ」を発表する。
デザインはオリジナルからインスパイアされて造形されたのはもちろん、イソのGTカーのアイデンティティである、「イタリアンカーにアメリカンマッスルの心臓を」というコンセプトもそのまま引き継げれ、エンジンにはチューニングを施した「コルベットZ06」のV8エンジンが採用された。
40年以上という長い期間を得て、オリジナルへの深い敬意を込めて、リブートモデルが登場するのは稀有なことだ。それはひとえにこの「イソ」の革新的かつ、完成度の高いGTカーが、伝説として語り継がれている点に依拠している。
そんな名声を作り上げた傑作「イソ・グリフォ」。ここまで美しく、オリジナルで残されたこの個体は、まさに自動車史に燦然と輝く遺産であると言えるだろう。