開催からすでに1週間が経ちましたが、アリゾナ・スコッツデールのオークションで見えた空冷911の相場観について改めてレポートしてみたいと思います。
日本でも非常に人気が高く、また近年は"空冷バブル"と揶揄されるほどの相場暴騰を見せた銘柄だけに、その動向からはこれからのコレクタブルカー市場全体の行く先までが占えるのでは?と考えた上でのレポートとなります。
なお、ここでは以前より空冷911に力を入れて長らく相場全体をリードし、
今回も多数の出品ロットのあった【Gooding &Company】における落札結果にフォーカスしてみることにしましょう。
今回の空冷911の出品は10台。
内訳はナローが5台、Gシリーズが1台、930ターボが2台、964が1台、993ターボが1台というものでした。
内、最低落札額(リザーブ)の設定があったのは1967年式の2.0S(SWB)のみ。
衝撃を受けたのはほとんどの出品ロットが予想落札額(エスティメート)を大幅に下回る額で落札されたこと。
エスティメートに入ったのは走行距離9,600mileというミントコンディションの1979年式911SCタルガ(予想:9万〜12万ドルに対して12万3200ドルで最終落札)と、
生産台数の少ない1993年式964アメリカ・ロードスター(予想:12万5000〜15万ドルに対して13万4000ドルで最終落札)のみで、
残る7台は予想落札を遥かに下回る金額での落札(67のSは最低落札額に届かず流札)という結果に。
特に驚いたのはナロー世代の落札結果で、美しくレストアされた1970年式の2.2Sが予想:18万〜20万に対して14万8400ドル、
走行僅か20,000mileで奇跡的とも言える良質なオリジナルコンディションを保った1973年式の2.4Tが予想:18万〜22万ドルに対して15万1200ドルといった具合に、
ひと頃では想像も出来ないような"超買得"な金額で落札成立のハンマーが次々と打たれたのでした。
この結果を悲観的に捉えるか、前向きに捉えるかについては意見が分かれるところではありますが、少なくとも"買い手"にとってはこの傾向はまさに朗報となるはず。
逆に"売り手"にとっては実に悩ましい状況ではあるものの、流れに逆らわずにこれ以上の下落前に売り切るのが得策になるのでは?と予測します。
空冷911にも確実に世代交代の波は押し寄せてきており、
今回は全く姿を見せなかった964RSや993RS、993GT2などはまだしばらくは踏ん張りを見せる気配はあるものの、それでも全体的に相場下落が本格化してきたという印象を強く受ける結果となりました。
ここ数年の空冷バブルに乗って投機目的で手に入れた層には多少ならずの損切りを覚悟する必要はあるものの、
ここにきて一気に"売り"が進み、空冷バブル前の相場に戻るのでは?という声も、
現地にいたバイヤーたちの間では囁かれていただけに、"売り時"の見定めが今後は非常に重要となることだけは間違いないでしょう。
さて、日本ではこの流れが今後どう進むのか?
BH AUCTION としても注視していきたいと思います。