1970 Ferrari 365 GTB/4 "Daytona" Competizione Conversion
- ・本格的な”コペティツィオーネ”コンバート
- ・イタリアの名工「アウトスポルト」がコンバート
- ・フェラーリ伝統のV12、FRレイアウト
車両説明
●名工「アウトスポルト」による”コペティツィオーネ”コンバート
”デイトナ”の通称で知られるこの「365GTB/4」は、イタリアを代表するカロッツェリアの一つ「アウトスポルト」によって、コンペティション仕様へとコンバートされた個体。
エンツォ・フェラーリの故郷であるモデナに工場を構える「アウトスポルト」は、戦後のカーレストアを牽引した、ボディワークのスペシャリスト集団だ。
代表を務めるフランコ・バッケリ氏は、FRPボディの傑作「フェラーリ512BB/LM」を手掛けたことで知られている。彼は若干14歳で、歴代レーシングフェラーリのボディの製造を担ってきた名匠ピエロ・ドローゴの工房の門を叩いたことで、そのキャリアをスタートさせた。
その後は、生涯をかけてボディ製造の可能性を追求し、伝統的なボディ技術の伝承を請け負ってきたのだ。そんな彼が率いる名工によって手がけられたこの”デイトナ”は、高い完成度を誇り、独特のオーラを放っている。
●”デイトナ”の美しさを極限まで際立たせる
その伝統技術に裏打ちされたコンバージョンの中でも、目を引くのが見事に造形されたフェンダーだ。
シャープなウェッジシェイプのデザインを生かしつつ、幅広のタイヤ、ワイドリムホイールを収めるため、大幅にワイド化されている。
そして内蔵型ロールバーに、専用ヘッドライト、フロントスポイラーに、エアダムとレーシングマシンよろしく、あらゆる点でカスタムが行われている。その姿は上位3位を独占した伝説の「デイトナ・インターナショナル・スピードウェイ」での活躍を否が応でも想起させてくれるだろう。
●伝統のV12エンジンと、FRレイアウト
今でこそスーパーカーといえばミッドシップレイアウトが常識となりつつあるが、FRにこだわりをもちづづけていたのがフェラーリだった。
オーソドックスなスポーツカーを思わせるロングノーズ、ショートデッキ、ファストバックのスタイリングは、やはりスポーツカーとしての”カッコよさ”が集約されている。
この「デイトナ」の発表後、フェラーリはFRレイアウトから離れていったが、その根底にあるFRへの情熱は静かに燻り続けた。
そして20年の時を経て、「マラネロ」によりFRフェラーリが復活。時の流れに逆行する思い切った選択と思われたが、そこはフェラーリ。プリミティブなスポーツカーのフィールを残しつつ、現代スーパーカーと呼ぶのに申し分ない圧倒的なパフォーマンスの高さを見せつけたのであった。
これを機にフェラーリはFRモデルを再びシリーズ化。ベルリネッタ、ポルトフィート、そしてモンツァを経て、フェラーリのFRへのこだわりは、究極「スーパーファスト」に結実することとなる。
そしてその流れの源泉には、常にこのデイトナの存在があった。フェラーリのアイデンティティを形成し、スポーツカーの真髄を集約したマシン。フェラーリを愛するファンにとって、この憧憬の念は未来永劫失われることはないだろう。