1971 MERCEDES-BENZ 600 Limousine
- 2.190台が生産された600リムジーネの中の1台
- 北米仕様のモデルを1987年に日本へと並行輸入
- 日本へ輸入後は32年間ワンオーナー
- 日本のメルセデス・ベンツ正規ディーラー「ヤナセ」での整備記録多数
- 革新的な油圧システムはすべて問題なく稼働
西ドイツ(当時)のダイムラー・ベンツ社がメルセデス・ベンツ ブランドで展開した超高級リムジン・シリーズ。
デビューは1963年のフランクフルト・ショーで、シリーズ名はメルセデス・ベンツ600(モデル型式はW100)とされた。
ショートホイールベース(3,200mm)の「リムジーネ」、ロングホイールベース(3,900mm)の「プルマン」、プルマンをベースとした後席オープン仕様(主に国家元首などの要人パレード用として用いられた)の「ランドーレット」がラインナップされている。
なお、生産台数は600リムジーネが2,190台、600プルマンが428台、ランドーレットが59台の計2,677台となる。
ボディは大きな開口部を持つランドーレットのラインナップを踏まえた強靭なフロアを持つモノコック構造で、600リムジーネは4ドア(5または6座)、600プルマン/ランドーレットは4ドアまたは6ドア(3列シートの7または8座)となる。
エンジンは新開発された90°V型8気筒の6.3ℓ SOHC(M100)が搭載され、燃料供給システムはボッシュ製のポートタイプ・メカニカル・インジェクションを採用。
250ps/4.000rpmの最高出力、51kgm/2,800rpmの最大トルクを発生した。
その他の機構面においても当時の最先端技術がふんだんに投入されており、Sクラス・サルーンのトップモデルだった300SEL 6.3で実績を積んだレイアウトを踏襲し、サスペンションはフロントがダブルウイッシュボーン、リヤはスイングアクスル式を採用。
さらにエアサスペンションを4輪に用いることで、最高級リムジンらしい滑らかで快適な乗り心地を実現したほか、2,470kg(600リムジーネ)という車体重量にも関わらず、走行中の荷重変化に適応したフラットな姿勢を常に保てるようになっている。
最高級リムジンに相応しく、装備面が充実していることは言うまでもないが、中でもユニークなのはトランクやドアの集中ロック機構やパワーウインドウ、さらにはトランクリッドの自動開閉などに電気モーターではなく、すべて油圧システムを採用している点。
モーター特有の作動音を無くし、油圧作動による滑らかでエレガントな動作が追求されているのである。
当個体は1971年式の600リムジーネで、車体番号は車両No. 1000.12−12−001742、ボディカラーはマルーン、シートはブラックレザーとなる。
ファーストデリバリーはアメリカ・カリフォルニア州で、1987年に日本へと並行輸入されている。
日本への到着後はヘッドライトが欧州仕様の一面ガラスタイプに変更されたほか、マイル表示だったメーター類も交換。
この際、走行距離は27,922マイル (44,675km)であったことが記録として残されており、その後の走行距離は10,989km(2019年4月時点)、積算距離は55,664kmとなる。メーカー交換の時期も正確に記されるなど整備記録も多数残されている。
街中を静々と移動するための単なるショーファードリムジンではなく、アウトバーンをハイスピードで駆け抜けることができる“ビジネスリムジン”として開発された600リムジーネ。
日本に来てからの32年間を熱心なカーエンスージアストのもとで過ごし、日本のメルセデス・ベンツの総輸入元として長く活動したヤナセの手によって入念なメンテナンスが施されたまさにパーフェクトコンディションを保った稀有な1台である。