1968 Honda S800 M Coupe
- 希少な左ハンドル個体
- 国内でレストア済
- 極上コンディション個体
- 「RSCホイール」レプリカを装着
●国内で徹底的なレストレーションを受けた希少な左ハンドルモデル
当個体は、ベルギーホンダにデリバリーされた、左ハンドル仕様となる「ホンダ S800 M クーペ」。「ホンダ S800 M」は元々輸出向けとして生産されたモデルであり、国内ではオープンルーフを備えたモデルだけ販売された。その意味でも当個体は希少性の高い「エスハチ」と言えるだろう。
さらに注目したいのが、この個体は日本国内で徹底的なレストレーションが行われた車両であるということだ。もちろん内外装共に、オリジナルのデザインが忠実に再現されており、50年以上前の車両であることを全く意識させないコンディションとなっている。
足元にはRSCホイールのレプリカも装着され、まさに当時からそのままの姿で立ち現れた幻の個体と言えるだろう。
●ホンダの理想が結実したスポーツカー
ホンダの「Sシリーズ」は、非常に革新的なコンパクトスポーツとして、ホンダを2輪メーカーから、世界的な4輪メーカーへと花開かせた着火剤だった。
世界から一挙に注目を集めた「S360」から、初めて量販に漕ぎ着けた「S500」、そして「S600」を経て、ホンダが「Sシリーズ」の完成形として提示したのがこの「S800」である。
基本的な性能は「S500」から引き継ぎ、エンジンに改良を加えた。排気量を791CCへと引き上げられた。水冷4気筒DOHCエンジン最高出力は70psを発揮。最高速度は160kmを記録した。これは世界的に見ても、小型スポーツカーにおいて頭一つ抜ける性能だった。
またエンジン特性は、4連キャブ、エキゾーストマニホールド、そして組み立て式クランクシャフトを備え、ホンダがモーターサイクル製造で培った高回転に特化した設計を採用。その高回転まで気持ちよく噴き上がるエンジン特性は、すでにホンダが世界のエンジンメーカーであることをドライバーに感じさせた。
●きびきびと走る小さなボディ
そして「Sシリーズ」もう一つの魅力は、その軽量コンパクトなボディにある。世界的に小型スポーツカーが流行していた、1960年代。その中でも無駄を一切感じさせない、洗練されたコンパクトボディと、それに付随する圧倒的な運動性能により、世界のスポーツカー乗りの注目を一挙に集めた。
S800Mクーペの車重は720kg。この軽量さは、もちろん圧倒的な旋回性能に直結した。さらに高性能エンジン、小気味よくシフト可能な4速フルシンクロMTは、ドライバーの操作をリニアに伝え、自動車を運転する楽しさを体現するような乗り味を実現した。
そしてエンジンフードを見れば「S800」のトレードマークであるバルジが、誇らしげに備えられる。それは本田宗一郎が思い描いた理想の小型スポーツカーが、完成形へと結実したことを表現する証とも言えるだろう。