1960年代後半、アルファロメオはエレガントなオープン2シーターを世に送り出し、その名は「スパイダー」シリーズとして後世に語り継がれることになる。その中でも1969年式の1750スパイダーヴェローチェは、アルファロメオの伝統的なDOHCエンジン技術とイタリアンデザインの美学が結実した特別なモデルだ。1,779ccの直列4気筒エンジンは、SPICA製メカニカルインジェクションによる精緻な燃料供給が特徴で、118馬力を5,500rpmで発揮。5速マニュアルを介してリニアな加速と軽快なレスポンスを実現し、4輪ディスクブレーキと優れたサスペンション設計が、当時としては先進的なハンドリングをもたらしている。

本個体は、アメリカの著名なスポーツカーディーラーおよびレーシングチームとして知られる「Brumos Porsche」のSnodgrassファミリーによって、45年以上もの長期にわたり所有された一台。ジャクソンビルのBrumosコレクションにてコンクールレベルのレストレーションが施され、その仕上がりは2005年のアメリアアイランド・コンクールデレガンスへの出展や、2019年のアルファロメオオーナーズクラブ（AROC）全国大会でのクラス優勝といった名誉に結実している。さらに、Duetto Registerに正式登録されており、その由緒正しい経歴はオーナーや愛好家にとって大きな価値を有する。

アルファロメオが生み出した純粋なスポーツ性、美しいスタイリング、そしてイタリアンモータリングへの情熱が凝縮された1750スパイダーヴェローチェは、今もなお多くのエンスージアストを魅了してやまない。本個体の来歴、レストレーションの水準、受賞歴、さらにはマニュアルやヒストリー文書の充実ぶりは、コレクタブルなクラシックカーとしての地位を一段と高めている。まさに、アルファロメオの誇る名車を最良のコンディションで体験できる、希有な一例と言えるだろう。