株式会社BINGO

2025/11/07 FRI - 2025/11/09 SUN

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BH AUCTION at CITY CIRCUIT TOKYO BAY

1971 Volkswagen Karmann Ghia

  • ワンファミリーオーナー車
  • 新車時からの記録一式あり
  • 外装は全塗装済み
  • 内装はオリジナルコンディションを保持

思い出のカルマンギア

思い出のクルマが手元に残っていたなら。
そんな夢を抱いたことがある人も多いだろう。
けれど、実際には想い出のクルマはいつの間にか手放され、仮に残っていたとしても、埃をかぶり、やがては大地と一体化してしまうことがほとんどだ。
そんな中、11月のオークションに出品予定の 1971年製フォルクスワーゲン カルマンギア は、まさに奇跡のように家族の思い出を今も鮮やかに纏っている。
このクルマには、埃も錆も似合わない。キーを回せばエンジンはご機嫌に目を覚まし、室内を見渡せば、ウッドパネルには年式相応の味わいがあるものの、ほかは驚くほどのコンディションを保っている。

この黄色いカルマンギアを最初に手にしたのは、現オーナーのお母様だ。
19歳で免許を取り、最初に手にしたのは赤いビートルだったが、どうしてもカルマンギアが欲しくて親に直談判。
その強い想いが叶い、手にしたのがこの黄色の一台だった。
なぜカルマンギアを選んだのか、なぜ黄色だったのか。
今となってはもう聞くことはできない。
それでも、結婚しても、子育ての最中も変わらずハンドルを握り続けた姿を想えば、彼女なりの譲れない理由があったのだろう。
1955年にデビューしたカルマンギアは、ビートルをベースにイタリアのギア社がデザインし、ドイツのカルマン社が手がけた小さな宝石のようなクーペだ。
“プアマンズ・ポルシェ”とも呼ばれた優美なシルエットとささやかなスポーティさは、当時の若者にとって憧れの的だった。
お母様もきっと、このクルマと走る日々を誇りに思っていたのだろう。
納車から半年で5,000km点検、1年で10,000km点検…走っては点検を怠らなかった記録が残っている。そんな記録からも、きっと几帳面な人だったんだろう。車がお好きな方だったんだろうと想像できる。
現在の走行距離は45,000km台。最初の2年間で2万キロ近くを駆け抜け、その後はゆっくりと時を刻んできた。
現オーナーが思い出すのは、助手席からの景色だ。
お母様の運転で、後ろの席には飼い犬のシェパードがちょこんと顔を出す。幼稚園や習い事の送り迎えはもちろん、写真に映るお祖母様との買い物も、すべてが黄色いカルマンギアと共にあった。
クーラーがない夏は暑かったという。それでも、1987年にエアコンの効くクラウン ワゴンへ乗り換えるまで、17年間このカルマンギアと走り続けた。
その後すぐに赤い190E 2.6に乗り換え、カルマンギアはガレージへと収まった。
お母様が他界された後も、思い出が詰まったこの一台を手放すことなど、家族には考えられなかった。
現オーナーが免許を取り、AT限定を解除してこのカルマンギアに乗ると決めた時もあったそうだ。しかし、癖のあるクラッチ操作とガレージ前の坂道発進に心が折れたという。
それでも、お父様にMT免許を取った姿を見せられたことは、かけがえのない記憶として残っている。
そんな多くの家族の思い出は、カルマンギアがガレージを占領し続ける十分すぎる理由だった。

時が経ち、ガレージに眠るカルマンギアのボディには錆が浮き始めた。
このままではいけない。そう感じた家族は、レストアを決意する。
お父様の友人が代表取締役を務める、初代シルビアの製造でも名を馳せた株式会社トノックスがレストアを担当した。錆が浮き始めたボディーは徹底的に処理が施され、外装は新車同様のコンディションに蘇り、エンジン・ミッションはオーバーホール。
一方で、内装は手を加えず、当時の空気を残す形で作業が進められた。
以来、トノックスでの定期メンテナンスを欠かさず、カルマンギアは新車のようなコンディションを保っている。

お父様が亡くなり、今は現オーナーがそのハンドルを託されている。
「手元に置いておきたい気持ちは強い。でも、このクルマにはもっと新しい思い出をつくりながら走ってほしい。」
だからこそ、オークションで新たなオーナーを探すことにしたのだ。
思い出は消えない。助手席に座り直したオーナーの横顔には、そんな決意がにじんでいた。

1971年6月の初年度登録から、同族ワンオーナー車として、横浜55のナンバーを今に引き継ぐ。新車時に渡されたと思われるヤナセの車検証入れや、記録簿、オーナーズマニュアルが残るだけでなく、これまでに受けてきたほとんどの整備記録簿も残る。
走行距離に関しても、記録簿を遡れば、実走行であることは間違いない。

2008年にトノックスが発行したレストアに関する見積書と、レストア時の記録写真も残っている。その後、令和に入ってからの点検記録などは残っていないが、今年、再度車検を取得するためにトノックスで整備が行われた記録が残り、現オーナーへと所有者は移行している。

ESTIMATE:

COMING SOON

VIN 1412620511
ODO 51,390 km
Engine No. AD184494