2000 Honda S2000
- 型式 : F20C(AP1)の前期型
- 走行距離 1,092km
- フルノーマル車両
- ベースグレード
- 一部整備記録簿残る
1998年、本田技研工業創立50周年記念企画として発表され、翌1999年に販売が開始された「S2000」。 その心臓部に収まるF20C型 2.0L直列4気筒DOHC VTECエンジンは、自然吸気ながらリッターあたり125ps、最高出力250psを発生。許容回転数は市販車の常識を覆す9,000rpmに設定され、まさにF1エンジンのフィーリングを公道で味わえるピュアスポーツとして、今なお伝説的な地位にある。
本車両は、発売当初の「ベースグレード」となる初期モデルだ。ボディーカラーは精悍な「シルバーストーン・メタリック」。インテリアにはメーカーオプションであった鮮烈な赤革シートが採用されている。同じくオプション設定だったナビゲーションシステムは未装着のため、ダッシュボード周りは至ってシンプル。走るためだけに削ぎ落とされた、S2000本来のストイックな機能美がここにある。
特筆すべきは、オドメーターが刻む「1,092km」という驚異的な数値である。
この奇跡的なローマイレージには、ある物語が存在する。
新車で購入した初代オーナーが不運にも直後に他界され、車両は長い間、納屋の中で眠り続けることとなった。その後、約5年前に現オーナーが引き継ぐことになるが、あまりの走行距離の少なさとオリジナルコンディションの尊さに、ステアリングを握り距離を伸ばすことを躊躇。その結果、ほぼ実走行が増えることなく、現代まで「新車当時の時間」が保存されることになったのだ。
しかし、単なる放置車両ではない。
現オーナーの下で毎週欠かさずエンジン始動が行われ、定期点検も実施。現オーナー所有となってからの記録簿は全て完備されている。 2001年以前の初期型特有の装備であるビニール製リアスクリーンは、経年変化により白濁が見受けられる。しかし、これはオリジナルの証であり、何よりオーナー自身がオープンエアでのドライブを前提としていたため、あえて交換されずに残されたものだ。
走りを極限まで追求したモデルでありながら、あまりの希少さにアクセルを踏み込むことを躊躇わせてしまう、罪作りな1台。 9,000rpmの未体験ゾーンへ飛び込むか、それとも歴史的遺産として後世へ守り抜くか。その選択権は、次のオーナーに委ねられている。

































































































































